示談とはどういうものですか
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事件を起こしたことについて被害者に謝罪し、被害者に生じた損害(慰謝料等)を賠償して赦しを請う手続です。示談には刑事上の効力と民事上の効力があります。
詳細な回答
示談とは
「主に刑事事件において、加害者が自らの犯した罪を反省して被害者に謝罪し、被害者に対して損害賠償を行って赦しを得ることを目的とする手続」
のことです。
「示談」という法律用語は実は存在せず、いわば俗称です。
法律上定義されているもののなかで「示談」に最も近いのは「和解」です。
ちなみに「民法上の和解」は、
「(法律上の争いがある場合に)当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約すること(によって効力を生ずる契約)」
とされており、民法695条~696条に規定のある「契約」の一種です。
示談には
①刑事上の効力
②民事上の効力
この2つの性質があります。
①刑事上の効力
被害者との間で示談が成立すると、それは「起訴するか不起訴にするか」の処分を検討したり、「有罪判決を下す際にどのくらいの量刑とするか」を判断したりする際の有利な考慮要素の一つとなります。
「示談」は明確な定義があるものではありませんが、だからといって被害者にお金を渡してしまえばそれで示談成立、無事に解決とはなりません。
不起訴や減刑といった刑事手続上の有利な効果を得るためには、その事件の内容に合わせた合意を被害者との間できちんと取り付けて、それを「合意書」とか「示談書」とか呼ばれる書面として残しておく必要があります。
刑事上の効力に絡んで影響のあるところとしては、例えば、
・解決金や慰謝料の金額が相場に照らして低すぎないか
・告訴が必要な罪の場合は告訴の扱いがどうなっているか
・処分に関する被害者の意向はどうか(宥恕文言があるか)
といったものが挙げられます。
こういったものがきちんと書面化されていれば不起訴や減刑に向けて大きな効果が期待できますが、そうでなければ僅かな効果しか得られません。
②民事上の効力
被害者に対して慰謝料や物損被害を支払って弁償しても、後になって
「心療内科に通っているので治療費を払ってほしい」
「請求し忘れていた損害があった」
と追加の請求を受けるようでは困ってしまいます。
そのため、弁護士が関与する合意書(示談書)では
「この合意書で定めたことを除いて以後はお互い何も請求しない」
ということを確認する条項(債権債務不存在条項)を入れるのが普通です。
その他、事件によっては特別な取り決めをすることがあります。
例えば
「今後、加害者は正当な理由なくして被害者に接近しない。これに反した場合は接近1回につき罰金10万円」
というような取り決めが合意書に記載されていた場合、これを破って加害者が被害者に接近したら後日別途の金銭請求を受けることがあります。
民法
(和解)
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。(和解の効力)
第六百九十六条 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。